研究領域概要

新学術領域  進化制約方向性

生物は決してランダムに多様化しているのではない。発生プログラムの変更や形態進化の変更には、不均一さや変わりにくい部分が認められる。しかし従来、生物進化のこのような側面へのアプローチは容易でなく、まともに扱われてこなかった。本研究では、この制約と揺らぎをさまざまなレベルで検出し、個体間差や環境変化による表現型変化など短期的な時間スケールで観察される表現型揺らぎと、長期的な時間スケールで起こる表現型進化の制約や方向性がどのように相関するのかを実験的に解明する。その結果に基づいて制約進化理論の適用範囲の検証と修正を行い、どのような要因が表現型進化に制約と方向性をもたらすのかを明らかにし、最終的には、自然淘汰理論、中立進化理論を包含し、生物進化をより包括的に説明できる理論の構築を目指す。

本領域の内容

本領域の大きな特徴は、統計物理を背景とした理論生物学研究(揺らぎ応答進化理論)を取り込むことにより、これまで各論の域を超えることが困難であった表現型の制約や方向性に関する進化を、統一的な視点から理解しようとする点にある。かつては、素粒子物理学も、宇宙全体の運命や全体像と直接関係するとは考えられていなかったが、理論と観測の統合が極微と巨大にまたがる2つの世界を結びつけた。本課題においても、階層を超えた統合を理論研究が担うことが極めて重要な柱となる。このように生物学や物理学、そしてそれらの融合領域を先導する研究者が一丸となり、革新的な進化理論の構築を目指すのが本プロジェクトである。 
(さらに詳しい内容は ニュースレターVol.1 No.1  及び Q&A をご覧頂きたい。)

[1]表現型の揺らぎ、擾乱や環境摂動に対する表現型の応答


遺伝子発現やエピジェネティック制御、解剖学的パターン、共生関係など、様々な階層における表現型の揺らぎ、摂動に対する表現型変動の応答を記述・定量的に測定する。

[2]表現型の進化的な制約・方向性との関連


異種間での表現型比較により、進化過程でどの表現型形成過程に制約や方向性が存在したかを推定する。それら表現型に関わる制御遺伝子や発生パターンを明らかにし、表現型創出プロセスがどのように揺らぎ・応答するかを解析する。


[3]進化制約理論の構築


[1&2]の結果と進化シミュレーションを含む理論との統合により、生物進化における制約と方向性を説明する新たな進化理論を構築する。